■■■【特別コラム】グッドデザイン賞への挑戦■■■

2022.11.18



グッドデザイン賞

グッドデザイン賞は1957年の通商産業省「グッドデザイン商品選定制度」創設以来、シンボルマークの「Gマーク」とともに親しまれてきた。家電製品や家具調度などが一般家庭でも愛用されている。
2005年国土交通省が景観法を施行した頃から、建物や都市空間などのデザインにも社会が注目するようになる。商品である集合住宅にも「Gマーク」が好感されるようになるとデベロッパーから設計者への受賞圧力も高くなった。
近年ではソーラータウン府中(2020)やジョンソンタウン(2021)といった環境系やまちづくり系の受賞が目に付く一方、従来の「素敵な建物」系では受賞は難しくなってきている。


デザイナーが街を創る

建築の世界には昔から多くの懸賞制度があるが、多くは国土交通省の枠組みの中にあり、受賞対象者は建築士に限られ、申請に検査済証の提示が必須であるなど建築関連法令遵守が前提となっている。
ところが通商産業省のグッドデザイン賞では、建築士資格が無くても応募できるのだ。建築士ではなくデザイナーが街を創る時代になったのだが、建築業界ではグッドデザイン賞への関心も評価も必ずしも高いとは言えない。
デザインと称しても技術的な評価軸で評価してきた時代は変わり、環境や文化、あるいは参加などを評価対象とし、革新性を併せ持ったデザインが求められている。


デザインレビュー

純粋芸術のデザインは芸術家の才能で決まるが、集合住宅や都市空間は公的な存在でもあり、所有者や利用者の利便を超えた公共性の高いデザインが求められる。
優れたデザインを実現する手法のひとつに「デザインレビュー」がある。
模型などを駆使し関係者から意見を聞き、デザインを客観的かつ多面的に調整する方法である。
南條設計室はこの手法を参考にして街並みのデザインに取り組んでいる。外観・外構を総合的にデザインし、私空間からコミュニティ空間、さらに公的空間へときめ細かく対応する。適宜それぞれの専門デザイナーたちともコラボレーションする。それが「グッドデザイン」だ。


受賞のよろこび

南條設計室の初めてのグッドデザイン賞受賞は2006年の「プラウドシティ大泉学園」であった。隣接する白川沿い桜並木の景観づくりが認められた。プラウドシティ浦和(2013)、狭山スカイテラス(2014)も都市スケールのデザインでの受賞だった。
またウッドヴィル麻布(2017)を始めリノベーション事業での受賞は保存再生への評価だった。
オアーゼ芝浦では区道を挟む三街区を一体的に整備する地域おこしで港区景観まちづくり賞(2016)を受賞した。都市景観大賞や土木学会賞など、受賞は純粋に喜ばしいし励みになることこの上ない。

記・南條洋雄



デザインで伝える

いつ頃からだったか定かでないが、このグッドデザイン賞が私たちデザイナーにとって身近にあるものになってかなりの年月が経った。賞自体の歴史は1957年創設とのことだが、顧客より賞応募を求められるようになったのはそこまで昔の話ではない。それにしても10年以上は経っただろうか。この間、我々としてもいくつもの受賞物件に参加してきたわけだが、昨今新たに賞応募の依頼を受けるたびに思うことがある。

グッドデザイン賞の理念
人間(HUMANITY)もの・ことづくりを導く創発力
本質(HONESTY)現代社会に対する洞察力
創造(INNOVATION)未来を切り開く構想力
魅力(ESTHETICS)豊かな生活文化を想起させる想像力
倫理(ETHICS)社会・環境をかたちづくる思考力
時代背景により、「何が良いデザインなのか」という評価基準自体も刻々と変化する。東日本大震災により多くのものが失われ、「人々にとって本当に必要なものが何なのか?」という事が改めて考えられ、「サービス」や「システム」といった「機能」が評価されるようになってきている。評価の対象は「もの」であるまえに「こと」なのだ。

我々は普段「もの」のデザインを依頼されることが多く、「こと」まで言及することがあまりないのかもしれない。しかし、本来デザインとは「こと」を「もの」としてかたちづくることであり、「こと」無しにはデザインにはならないのではないか。このように考えたとき、我々のプロジェクトへの関わり方にも新たなステージが見えてくる。デザインを提案する者として、もっと「こと」に言及し、提案していくことの必要性を感じるのである。

我々は街の景色をデザインするという目線で、いつも建築のデザインに取り組んでいる。一つ一つの建築をしっかり熟考しデザインすることで、街が美しく素敵な景気になると信じているからである。この景色をより素敵なものにするには、「こと」に焦点をおき、その場所の環境を、未来をデザインすることを忘れてはならないと思う。

グッドデザイン賞は「こと」を評価する。自分たちのためではなく、社会に向けた、未来に向けた「こと」である。「こと」は我々だけでなく、そのプロジェクトに関わる全ての人々が考えるべきものであり、ものづくりに関わる全ての人々が「こと」を考えるプロジェクトが評価されるのだろう。社会に向けた、未来に向けた「こと」からすべてがはじまれば良いと思う。

記・岡崎徹



グッドデザイン賞受賞作品リンク
集合住宅再生プロジェクト
リアージュ砧テラス
アネシア本山The Grand Residence
ウッドヴィル麻布
the C
ザ・ライオンズ一条タワー岐阜
狭山スカイテラス
シェアプレイス聖蹟桜ヶ丘
リアージュつくば春日
プラウドシティ浦和
プラウドシティ大泉学園
その他受賞作品リンク
オアーゼ品川レジデンス品川区緑化賞
オアーゼ芝浦港区みどりの街づくり賞
港区景観街づくり賞
狭山スカイテラス土木学会デザイン賞
都市景観大賞優秀賞
ザ・パークハウス石神井町6丁目首都圏優秀マンション表彰優秀賞
魚華ふじさわ景観まちづくり賞
プレイス秋谷日本建築家協会優秀建築選
パティオス・グランアクシブ日本建築家協会優秀選
ミオラグゼ軽井沢日本建築家協会優秀建築選
エルザ世田谷日本建築家協会優秀建築選
ウェルシティ横須賀神奈川建築コンクール入賞
都市景観大賞100選
FK邸日本建築士連合会第22回会員作品展優秀賞