■■■建築に生きる 第1回 建築を愛しなさい ■■■

2023.06.09

南條設計室は建築家南條洋雄をリーダーとする建築家集団です
建築を愛し建築を作り続ける人生は素晴らしいものです
事務所の活動をご紹介し建築への熱き思いを語ってまいります
あなたも私たちと合流して「建築」しませんか!

第1回 建築を愛しなさい


建築に生きる

我が国で「私は建築家です」と名乗ることは稀である。ブラジルでは“Sou arquiteto”というのが普通だったのだが。この違いについては後ほど私見を展開しようと思う。
つい最近、私76歳、南條設計室38歳の誕生日を祝うことができた。大学進学で建築を希望したのがスタートだとすれば、早60年間「建築に生きる」人生だったことになる。そして悔いはない。いや、それどころかますます建築が好きでたまらない。
私の愛して止まない「建築」という魔物について、そして「建築に生きる」人生の素晴らしさについて、特に建築を志す若い皆さんに、散文をお届けしたい。
南條設計室には、多くのスタッフやOBOG、そして建築以外の様々な分野の若い人たちが結集して「建築」に取り組んでいる。取り組むに値すればこそ、38年間も続けてこれたのだと思う。 南條設計室で「建築に生きる」人生を一緒に歩んでみませんか? 


建築を愛しなさい

この間多くの図書を断捨離してきたが、死守する一冊の本をご紹介したい。ジオ・ポンティ著大石敏雄訳「建築を愛しなさい」美術出版社1962年初版Amate L`Architettura by Gio Ponti である。
あらゆる角度から「建築」を語る賛歌であり、言語化された建築論に魅了される。
「建築を愛しなさい。古いものも新しいものも。(中略)建築を愛しなさい。なぜならあなた方はイタリア人でありイタリアに住んでいるからです。建築はイタリア人だけの天職ではありませんが、イタリア人の天職の一つであります。イタリアはこれを神が半ば、建築家が半ば創りました。(中略)それぞれの国の大胆で熱烈な若い建築家を通して現代の建築を愛しなさい。(中略)つねに人間的な共感に満ちた建築、明快で本質的かつ純粋な、想像力に満ちた建築をかれらに要求しなさい。結晶のように純粋な建築を。」
この最後のくだりの「かれら」とはわれわれ「建築家」のことなのだ。


実に建築的だ!

ご紹介したジオ・ポンティの書物の中に、このようなくだりがある。
「トニー・ブイエというパリの運転手はイタリアをどう思うかとたずねられた時こう答えました。『実に建築的だ』。これが民衆の声です。」
江戸末期に来訪した欧米人は当時の江戸の美しさに驚嘆した、との記述がある。江戸の街も間違いなく「建築的」であったはずだ。
あれから150年経過した今日、私たちの日々の生活において「実に建築的だ!」と声をあげることがあるだろうか?
南條設計室は「住宅から都市デザインへ」という目標を掲げそれを実現するために集まった建築家集団だ。38年間つくり続けてきた「街」は北海道から沖縄まで全国におよび、建物の総数は数百を数える。そのほとんどは住むための建物=住宅だ。ヴェネチアも江戸も、古来「街は住宅で出来ている」のだ。それらの住宅を「建築的」な存在に仕立て上げることを目標としている。


記・南條洋雄

■第2回 建築家=指揮者 
■第3回 小さな村の物語
■第4回 建築家という職能
■第5回 デザイン監修論
■第6回 まちづくりに参加する
■第7回 リノベーション最前線
■第8回 住宅が建築の原点
■第9回 美しい国づくり
■第10回 美しい職場・楽しい職場
■第11回 建築家は芸術家か
■第12回 建築家も地震と戦う
■第13回 建築家は旅をする
■第14回 マンションと呼ばないで!
■第15回 建築家という生業
■第16回 建築と神事
■第17回 建築家は外交官
■第18回 正月の警鐘
■第19回 協働・自働・己働
■第20回 建築家は二兎を追う
■第21回 コンペという魔物
■第22回 ボランティア考