■■■建築に生きる 第29回 JIA/IAB/UIA■■■
2024.07.05
第29回 JIA/IAB/UIA
Sou arquiteto
「我が国で『私は建築家です』と名乗ることは稀である。ブラジルでは“Sou arquiteto”というのが普通だったのだが。この違いについては後ほど私見を展開しようと思う。」
これは当コラム第一回の冒頭言である。丸一年書き続けて来た今、いよいよ私見を述べてみたい。
皮肉なことに2005年姉歯事件の頃、茶の間の話題に「建築士」という単語が頻出した。今年の高校生のなりたい職業ランキングとやらをみると第12位に「建築士・建築関連2.7%」があった。だが、これを「建築家になりたい」とは読めない。
このコラムでこの1年間、様々な角度から私の「建築家像」を語ってきた。指揮者であり、映画監督であり、デザイナーであったりまちづくり人であったりもする。芸術家、外交官、ボランティア、音楽家、そして旅人・・・。宴会の名幹事なんて特技もあるかもしれない。そんな時「私は一級建築士です」と名乗るより「私は建築家です=Sou arquiteto」の方がしっくりくる。曖昧ながらも。
建築家協会って?
我が国には、建築学会、建築士会、建築士事務所協会、建設業協会など数十もの建築に関係する団体が存在し、一般社会からみれば難解極まりない。いずれの団体も私にとっての「建築家像」とは合致しない。強いて言えば建築家協会(JIA)が一番私のイメージに近い職能団体であり、私は公益社団法人日本建築家協会創設(※)以来の正会員である。
ブラジルではarquiteto=建築家の職能は確立されていて、団体名はブラジル建築家協会(IAB)である。
さて、両国の協会JIAもIABも国際建築家連合UIA(Union Internationale des Architectes)に国を代表して登録された団体なのだ。即ちJIAは我が国の建築関係団体の中で、唯一UIA基準に適合する建築家の集団なのである。各国毎にその国を代表してUIAに加盟する団体があるが、日本のJIAは会員数約5千名で、アメリカの8万人余を大きく下回る。UIAが定義する「建築家」という存在の認知度の差は認めざるをえない現実がある。
※1987年社団法人新日本建築家協会(JIA)発足、1996年日本建築家協会に改称、2013年公益社団法人に移行。
名誉会員
先週6月26日の2024年度日本建築家協会通常総会において、私は栄誉ある名誉会員に選任いただいた。当協会設立は1987年、私がブラジルより帰国して事務所を始めた2年後だったから今年で37年目なのだが、こうした協会活動に全く関心のない同業者仲間も多い。ちなみに一級建築士の人数は約14万人らしい。この国で建築設計業務を行うのに建築家協会会員である必要は無い。
私はブラジルでの協会活動体験が身についており極めて積極的だった。46歳で副支部長を拝命し、その後も本部理事、職責委員長、まちづくり等推進会議議長などを歴任した。UIA活動にも前向きでUIA東京大会2011では財務部会長を務めた。2012年からはJIA渋谷地域会代表として地元渋谷区の防災まちづくりなどにも積極的に参加してきた。
ブラジルで心地良かった「建築家が認知される社会」を日本に実現するには、個人の主張は無力であり、協会としての団結が不可欠だと思うからである。
記・南條洋雄
■第1回 建築を愛しなさい■第2回 建築家=指揮者
■第3回 小さな村の物語
■第4回 建築家という職能
■第5回 デザイン監修論
■第6回 まちづくりに参加する
■第7回 リノベーション最前線
■第8回 住宅が建築の原点
■第9回 美しい国づくり
■第10回 美しい職場・楽しい職場
■第11回 建築家は芸術家か
■第12回 建築家も地震と戦う
■第13回 建築家は旅をする
■第14回 マンションと呼ばないで!
■第15回 建築家という生業
■第16回 建築と神事
■第17回 建築家は外交官
■第18回 正月の警鐘
■第19回 協働・自働・己働
■第20回 建築家は二兎を追う
■第21回 コンペという魔物
■第22回 ボランティア考
■第23回 リゾートを建築する
■第24回 スケッチは楽しい
■第25回 音楽は楽しい
■第26回 木とのつきあい
■第27回 未知の国ブラジル
■第28回 気になる伊東屋